30代未婚の交際率は男18.0%、女26.7%。宮台真司&二村ヒトシが「日本人の性的退却」を斬る! |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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30代未婚の交際率は男18.0%、女26.7%。宮台真司&二村ヒトシが「日本人の性的退却」を斬る!

宮台真司と二村ヒトシが語る「セックスレス増加の真実」とは

昔は「恋愛やセックスができない男」は地位が低かった

イラスト:たなかみさき

宮台 小中学校での性教育の悪影響を指摘する声もある。20年前の援交全盛期以降、性教育の場で性感染症や妊娠のリスクを強調し、「性愛に関わると自分をコントロールできなくなって受験や就職活動を棒に振る」と脅してきたことが、学生たちからの聴き取りで分かっています。

 こうして、性愛に関わるのは踏み外しだとの意識が拡がる一方、それを背景に、性愛にハマると教室でのスクールカーストを急降下するようにもなる。その延長線上で、2010年ころから大学生女子の間で、性愛にコミットすると「ビッチ」と陰口を叩かれるようになります。

 大学生時代の僕らは、彼女や彼氏がいないことを本当に寂しいと思っていて、友達とよくそういう話もしました。寂しさから抜け出すために、必死で女とつながろうと努力したし、一人ぼっちの後輩がいたら、なんとか助けてあげたいと思ってあれこれ伝授したりしました。

 ところが今は孤独の埋め合わせツールがいろいろあります。インターネットもそう。AVもそう。だから現実に寂しさを感じないで済む。それで、誰もヘルプミーとは言わないし、周りが助けてあげようと思うほど困った表情も見せない。だから知恵もシェアされない。

 僕ら世代は、寂しいのは嫌だと思ったから必死で恋人を作ろうとしたし、寂しくて困っている仲間がいたら助けてあげようと女を紹介してあげた。でも今はかつてほど寂しいと思わず、助け合う仲間もいなくなって、伝承線が切れました。性的退却の背景の一つですね。

二村 逆に言えば、僕らが若いころの「恋愛やセックスができない男」は明らかに地位が低かった。そういう意識の傾向は皆に内面化され、今も残っているかもしれません。

 かつて自分が地位の低い側の青年だったからか、僕は必ずしも「全ての男女が恋愛やセックス(や結婚)をしなければならない」ということが必修課目だとは思っていません。むしろ恋愛もセックスも、相手に依存する可能性が高いぶん非常に危険なものなのだと。これからの時代は、恋愛もセックスも結婚も、それが危険物であることを承知して、乗りこなす技術を理解している者だけが敢えて手を出す〈趣味〉になっていくのだろうなと。

 自著『僕たちは愛されることを教わってきたはずだったのに』で、少女マンガの古典でありエロBLの濫觴(らんしょう)である竹宮惠子の『風と木の詩』を分析しました。二人の主人公のうち、セックスでしか他人に触れられず、しかも暴力的で被支配的でフェチ的な、相手のことを心の底では軽蔑しているようなセックスに耽溺(たんでき)してしまうメンヘラ美少年ジルベールは、悲劇的な最期をとげます。もう一人の主人公セルジュは、ジルベールとの性愛以外にピアノの演奏でも変性意識を得ることができたから生き延びられたのだ、というのが僕の解釈なのですが。

『どうすれば愛しあえるの』より構成)

宮台真司 みやだい・しんじ
社会学者。映書批評家。首都大学東京教授。1959年宮城県生まれ。東京大学大学院人文科學研究科博士課程修了。社会学博士。権力論、国家論、宗教論、性愛論、犯罪論、教育論、外交論、文化論などで多くの著書を持ち、独自の映書評論でも注目を集める。著書に『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(幻冬舎文庫)、『いま、幸福について語ろう 宮台真司「幸福学」対談集』(コアマガジン)、『社会という荒野を生きる。』(KKベストセラーズ)、『正義から享楽へ 映書は近代の幻を暴く』(blueprint)、『反グローバリゼーションとポピュリズム』(共著、光文社)など。

二村ヒトシ にむら・ひとし
アダルトビデオ監督。1964年東京都生まれ。慶應義塾幼稚舎卒、慶応義塾大学文学部中退。監督作品として「美しい痴女の接吻とセックス」「ふたなりレズビアン」「女装美少年」など、ジェンダーを超える演出を数多く創案。現在は、複数のAVレーベルを主宰するほか、ソフト・オン・デマンド若手監督のエロ教育顧問も務める。著書に『すべてはモテるためである』『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(ともにイースト・プレス)、『淑女のはらわた』(洋泉社)、『僕たちは愛されることを教わってきたはずだったのに』(KADOKAWA)など。

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宮台真司/二村ヒトシ

みやだい しんじ にむら ひとし

■宮台真司 みやだい・しんじ

社会学者。映書批評家。首都大学東京教授。1959年宮城県生まれ。東京大学大学院人文科學研究科博士課程修了。社会学博士。権力論、国家論、宗教論、性愛論、犯罪論、教育論、外交論、文化論などで多くの著書を持ち、独自の映書評論でも注目を集める。著書に『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(幻冬舎文庫)、『いま、幸福について語ろう 宮台真司「幸福学」対談集』(コアマガジン)、『社会という荒野を生きる。』(KKベストセラーズ)、『正義から享楽へ 映書は近代の幻を暴く』(blueprint)、『反グローバリゼーションとポピュリズム』(共著、光文社)、二村ヒトシとの共著『どうすれば愛しあえるの』(KKベストセラーズ)など。

 

■二村ヒトシ にむら・ひとし

アダルトビデオ監督。1964年東京都生まれ。慶應義塾幼稚舎卒、慶応義塾大学文学部中退。監督作品として「美しい痴女の接吻とセックス」「ふたなりレズビアン」「女装美少年」など、ジェンダーを超える演出を数多く創案。現在は、複数のAVレーベルを主宰するほか、ソフト・オン・デマンド若手監督のエロ教育顧問も務める。著書に『すべてはモテるためである』『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(ともにイースト・プレス)、『淑女のはらわた』(洋泉社)、『僕たちは愛されることを教わってきたはずだったのに』(KADOKAWA)、宮台真司との共著『どうすれば愛しあえるの』(KKベストセラーズ)、千葉雅也と柴田英里との共著『欲望会議 性とポリコレの哲学』(KADOKAWA)など。

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  • 2017.10.27